世間ではあまり知られていませんが、実は日本の窓ガラスメーカーは世界的でもトップのシェアを誇っています。
それも1つのメーカーが独占しているというわけではなく、複数の日本メーカーが世界でトップを競っているのです。
そこでこの記事では、どのような窓ガラスメーカーが世界のトップに君臨しており、それぞれのメーカーにおいてはどんなふうな傾向が見られるのかに関してご案内していこうと思います。
■旭硝子
世界シェアのトップに君臨するのが「旭硝子」です。
板ガラスをメインに液晶ガラスや太陽電池用ガラスの分野でも世界トップクラスのシェアを誇り、ガラス業界全体でその存在を知らしめています。
しかし意外にも商業施設などの一般的に目立つ場所では旭硝子の製品はほとんど使われることはありません。
旭硝子の製品に強い個性がないという理由もありますが、それよりも「名より実を取った」といった方が正しいでしょう。
目立つ場所での競争は非常に激しく、名は売れても実入りは少ないというのが現実です。
そのため、名を売ることは捨て数量を稼げて儲かる場所での戦いを選んだのです。
そういった戦略によって、「目立たないけど世界一」という結果に繋がったのだといえます。
しかしそんな旭硝子ですが、今後は「インフォベール」という新製品を引っ提げ、イベント会場など目立つ場所での争いにも割って入ろうとしています。
旭硝子らしい技術力の高い製品で、人目につきやすい場所でもシェアを奪って行ければ、世界一の座は揺るぎないものと考えられるのではないでしょうか。
■日本板硝子
日本板硝子は旭硝子と並び世界でもトップを争う大手メーカーです。
1918年の設立と長い歴史があるメーカーですが、その間には同社よりも規模の大きな英国・ピルキントン社を買収するなど、世界的にも大きな話題を振りまいてきました。
日本板硝子の製品は、家庭向けのものから商業建築向け、通信機器向け、自動車向けなど幅広い分野で使われています。
特に家庭向けのガラスには力を入れており、高断熱性のガラスや防犯性の高いガラス、防火ガラスなど充実のラインナップです。
米国カーディナル社とも提携し、ピルキントンのCVD断熱コーティングを活かしたエコガラス分野において大規模な躍進が期待されています。
■セントラル硝子
セントラル硝子は住宅用硝子や自動車ガラス、電子産業用ガラス、ガラス繊維などを製造販売しています。
旭硝子や日本板硝子ほどの規模ではありませんが、合弁会社の設立などで着実にシェアを伸ばしてきています。
フランスのサンゴバン社と設立したセントラル・サンゴバン合弁会社は、セントラル硝子にとって世界シェアを広げると大きなポイントとなりました。
この合弁会社ではアジアのマーケットを中心に、主に自動車ガラスの製造販売を行っています。
すでに世界でも有数のガラスメーカーである両社は、合弁会社の設立によりそれぞれが苦手としていた分野や進出していない地域でのシェアを獲得することで、さらなるブランド価値と売上の向上を狙います。
自動車ガラス部門が伸びてくれば、業界トップ3も射程圏内と考えられるのではないでしょうか。
■HOYA
HOYAは日本初の光学ガラス専門のメーカーとして誕生しました。
その後はガラスだけでなく半導体やデジタル機器分野にも進出し、内視鏡なども製造するメーカーとなりました。
2008年にはカメラメーカー大手のペンタックスと経営統合し、三和色と第一勧銀色を併せ持つ企業として話題となりましたが、その後デジタルカメラや交換レンズなどのイメージング・システム事業は2011年にリコーへ譲渡することとなります。
様々なガラス製品を開発しているHOYAですが、液晶保護ガラス製品にも「アルミノシリケートガラス」という独自の技術を使用しており、耐圧腕時計やスマートフォン本体の液晶ガラスと同じ種類のガラスが使用されています。
■日本電気硝子
日本電気硝子も世界でシェア争いをしているガラスメーカーです。
フラットパネルディスプレイ用ガラスの大手メーカーとして知られており、液晶用のガラス基板では世界の20%を生産しています。
これは米国コーニング社、旭硝子社と並んで世界3強と評されるほどのことです。
ディスプレイ用ガラス以外にも、電子部品用ガラスやガラスファイバ、建築用ガラスなど幅広く製造しています。
「見えないガラス」という特殊なガラスの製造もしており、目視ではガラスがあることにほとんど気が付かないほどの視感反射率の低さとなっています。
■まとめ
今回ご紹介したように、日本には世界を代表するガラスメーカーがたくさん存在しています。
紹介したメーカーを中心に世界でシェア争いが繰り広げられており、それぞれの企業の戦略や技術力の差異が出て将来どんな風な勢力図に変化していくのか注目されています。
現在は低価格帯の中国メーカーも伸びてきているだけに、そういった製品に対して日本メーカーがどういった戦略で立ち向かうのかにも注目が集まります。
私たちが普段何気なくお世話になっているガラス製品ですが、こういったメーカーのたゆまぬ努力によって品質の高い製品を使用することができているのです。